かつては卒業式でよく歌われていた「仰げば尊し」ですが、最近ではこの曲を選ぶ学校が少なくなっていますね。
その背後にはどんな理由があるのでしょうか。
この楽曲には、現代の若者には馴染みの薄い古い言葉が多く使われています。
たとえば、「分かれ目」や「いととし」、「やよ」、「蛍の灯火 積む白雪」といった単語です。
これらの言葉の意味や、それが持つ深い意味について、現代語訳と解説を交えてみていきましょう。
「仰げば尊し」の歌詞を通じて、その詩的な美しさを再発見します。
「仰げば尊し」が卒業式で歌われなくなった理由
古語の使用とその解釈の困難さ
「仰げば尊し」の歌詞には古語が盛り込まれており、これが現代の学生たちにとっては少し馴染みにくく、理解が難しいため、なじみにくい一因となっています。
これらの言葉は、古文の授業では学ぶことがありますが、普段の会話で使われることはほとんどありませんから、意味の伝達が難しいのです。
時代背景と価値観の変化に伴う違和感
特に「身を立て 名をあげ やよ励めよ」というフレーズには、自己実現を強く促すメッセージが込められており、過去の軍国主義を想起させると批判されることもあります。
戦後、このような問題視される部分を省略して、歌われるのは特定の節だけになることが多くなりました。
教師への一方的な賛美
「仰げば尊し わが師の恩」という歌詞が、教師だけに感謝を示すことに偏っているとされ、今の社会の共同体意識にそぐわないと指摘されることがあります。
教育には教師だけでなく、たくさんの人々が関わっていることを理解し、全ての貢献者に感謝を示すことが求められています。
新しいジャンルの卒業ソングの台頭
1980年代からは、卒業をテーマにしたポップソングが数多くヒットし、新しい卒業ソングとしての地位を確立しました。
これらの曲は、卒業生の心情に直接訴えかける内容であり、学生自身が選曲する文化も根付いています。
「仰げば尊し」の歴史とその原曲
「あおげばとうとし」と呼ばれるこの曲は、1884年(明治17年)に発表された、作者が未だに明らかでない日本の伝統的な唱歌です。
2011年には、「仰げば尊し」の原曲とされる楽曲が発見されました。その原曲は1871年にアメリカで公表された「Song for the Close of School」で、T・H・ブロスナンが作詞、H・N・Dが作曲したとされています。
ブロスナンは当時、学校の校長を務めており、その後保険業界に転職したと言われていますが、彼についての具体的な情報は少ないです。作曲者のH・N・Dについても、詳しい情報は残っていません。
「Song for the Close of School」を直訳すると、「学校終了のための歌」や「終業式の歌」という意味になります。この曲は学校での時間や友人たちとの別れをテーマにしています。
1番:「仰げば尊し」の英語歌詞とその和訳
We part today to meet, perchance,
Till God shall call us home;
And from this room we wander forth,
Alone, alone to roam.
And friends we’ve known in childhood’s days
May live but in the past,
But in the realms of light and love
May we all meet at last.
和訳:
「私たちは今日ここで別れを告げますが、神が私たちを家へと呼ぶその時まで、いつかまた会えるかもしれません。
この教室から私たちはそれぞれに歩みを進め、ひとりひとりが彷徨い始めます。
子ども時代からの友人たちは過去の中に留まるかもしれませんが、光と愛が満ちた場所で、最終的には皆が再会するでしょう。」
2番:「仰げば尊し」の英語の歌詞とその和訳
Farewell old room, within thy walls
No more with joy we’ll meet;
Nor voices join in morning song,
Nor ev’ning hymn repeat.
But when in future years we dream
Of scenes of love and truth,
Our fondest tho’ts will be of thee,
The school-room of our youth.
和訳:
「さらば、古き教室よ。
もうこの壁の中で喜びを共有することはありません。
朝の歌声や夕べの讃美歌を再び繰り返すこともありません。
しかし、未来に愛と真実の場面を夢見るとき、
私たちの最も愛しい思い出はこの教室、私たちの青春の教室となるでしょう。」
3番:「仰げば尊し」の英語の歌詞とその和訳
Farewell to thee we loved so well,
Farewell our schoolmates dear;
The tie is rent that linked our souls
In happy union here.
Our hands are clasped, our hearts are full,
And tears bedew each eye;
Ah, ‘tis a time for fond regrets,
When school-mates say “Good Bye”
和訳:
「さらば、心から愛した教室よ。
そしてさらば、親愛なる学友たち。
ここで結ばれた私たちの絆は今、解かれました。
私たちの手は握られ、心は満たされ、涙がそれぞれの目を濡らしています。
これは、学友たちが「さらば」と言う時、愛情深い後悔の瞬間です。」
この歌の作詞者と作曲者についてはアメリカでもあまり知られておらず、この件についての研究は今後も続けられる見込みです。
「仰げば尊し」の詳細な歌詞解説と現代語訳
「仰げば尊し」は、日本の伝統的な卒業式の歌として知られています。
1番
教師への尊敬と感謝の気持ちを表しています。(「仰げば尊し、わが師の恩」)
教育を受けた時間がどれほど速く過ぎ去ったかを述べています。(「教えの庭にも、はや幾年」)
時間の流れの速さを感じつつ、学び舎との別れの時が来たことを歌っています。(「思えばいと疾し、この年月」「今こそ別れめ、いざさらば」)
2番
日々の支え合いと感謝の心を讃え、卒業後もお互いを忘れないよう願っています。(「互いに睦し、日頃の恩」「別れるる後にも、やよ忘るな」)
自立と社会での成功を目指して努力するよう促し、再び別れの時を迎える心境を表現しています。(「身を立て名をあげ、やよ励めよ」「今こそ別れめ、いざさらば」)
3番
学び舎への愛着と、学問への熱心な努力を表す言葉が使われています。(「朝夕慣れにし、学びの窓」「蛍の灯火、積む白雪」)
過ごした時間の大切さと、忘れないことの重要性を強調しています。(「忘るる間ぞなき、ゆく年月」「今こそ別れめ、いざさらば」)
歌詞に出てくる言葉の意味
いと疾し(いととし)
「いと」は「非常に」という意味で、「疾し」は「速い」という意味です。
この表現は「非常に速く」という意味合いで使われています。
分かれ目
「別れめ」とも表記され、重要な決断や行動の瞬間を示します。
「今こそ別れめ」は「今こそ別れの時」と訳されます。
やよ
この言葉は、呼びかける際に使用され、「さあ」や「よし」と同じように使われます。
蛍の灯火、積む白雪
このフレーズは「蛍雪の功」という故事に由来し、学問に対する献身的な努力を象徴しています。
この故事は、質素な環境でも学問を追求する苦労を描いています。
まとめ
「仰げば尊し」の歌詞が現代の卒業式で歌われることが少なくなったのは、時代の変化に伴いその内容が現代の状況に合わなくなったためです。
卒業式は進化し続け、それぞれの卒業生にとって意味深いものであるべきです。
この記事が皆さんの理解を深める手助けになれば幸いです。読んでくださってありがとうございました。